「ともに泣く」「ともに悩む」というメッセージ(元「法律新聞」編集長の弁護士観察日記)
http://kounomaki.blog84.fc2.com/blog-entry-585.html
「良い弁護士とは何か」ということを、私は常々考えています。そのテーマについては他の弁護士以上に考えているかもしれません。
そのような私ですが、上記リンク先記事を読んで、「良い弁護士とは何か」ということを再び考えさせられました。
「良い弁護士」というのは、言うまでもなく依頼者にとって良い弁護士という意味でしょう。弁護士は依頼者との間で委任契約を結んでおり、依頼者のためにベストを尽くす義務を追っています。
では、依頼者にとって良い弁護士というのは、どのような弁護士でしょうか。
まず、依頼者が望んでいることは、こちら側の要望が100%通ることでしょう。原告であれば全部勝訴、被告であれば全部棄却を望むはずです。
そうであれば、訴訟において100%満足の行く結果を獲得する弁護士が「良い弁護士」なのでしょうか。
ここで一つ注意しなければいけないのは、訴訟や調停になるような事案というのは、いずれが法的に正しいのかが微妙な事案がほとんどであるということです。つまり、完全な「ふっかけ」訴訟というものは少なく、大抵のケースにおいては「必ず勝訴できる」と断言出来ないということです。
そのようにほとんどのケースにおいて勝訴が約束されない以上、依頼者が弁護士に求めるものというのは、「満足の行く説明」だと言えるのではないでしょうか。
「満足の行く説明」というのは、なぜこのような内容を準備書面に記載し、なぜ依頼者が言うような内容を準備書面に記載しないのかという点についての説明が、特に大きな比重を占めていると思います。あとは、訴訟制度上の手続き的な面に関する説明でしょう。
「とりあえず勝てばいい。勝てば依頼者は納得する」というような姿勢の弁護士もいると思いますが、私はそのような姿勢で事件に取り組もうとは思いません。結果を追求することはもちろんですが、勝訴を保証できる事案が無い以上、いかに詳細かつ丁寧に依頼者に対し説明するかということを常に念頭に置くべきだと考えるわけです。
極端な言い方になるかもしれませんが、負けてしまった場合にも依頼者に満足してもらえるような弁護士というのが、本当の意味での「良い弁護士」なのではないでしょうか。
勝訴を目指すのは当然のことですから、勝訴を目指す弁護士のことを「良い弁護士」と評価することは出来ないでしょう。そのような姿勢に加えて、負けてしまった場合にも依頼者に満足してもらえる程度にまで徹底的に説明義務を果たすという姿勢こそが、「良い弁護士」と評価されるに値するのではないでしょうか。
依頼者の方を向き、相手方の方を向き、裁判所の方を向き、世間の方を向き、そしてまた依頼者の方を向く。弁護士が一番向かなければならない方向は、相手方でも裁判所でも世間でもなくて依頼者なのです。
0 件のコメント:
コメントを投稿